Down in Albion

Down in Albion

♥♥♥♥♡

私は今の今までこのアルバムを聴くまい、手にするまいと頑なに拒み続けてきました。それは、このアルバムを手にしてしまうことがあのピ−トとカ−ルの決裂を、決別の宣言を認めてしまうことになると思ったから。でも、やはりどうしても聴きたかった。このアルバムには、苦しみのドン底にいる主人公の、もしくは世間の喧騒を横目にそ知らぬ顔をしてふらふらと漂っていってしまう人物のどうしようもない現実が綴られているから。けれどその重苦しい状況は当にその渦中にいる彼の放つユーモアで一蹴され、このアルバムに収められているのはもはやただ克明に自分の痛みを、周囲や特定の人物への憎しみを描き出しただけのサウンドではなく、逃避の先の夢の中に生きているようなサウンドでもない。苦しい現実を別の何かへ、美しいものへと昇華させた音と詞による軌跡そのもの。